高K血症

要点

  ①早期認識が大切(モニター波形、血液ガス、心電図)
  ②初期治療はカルチコール®療法!(カルチコール®8.5%(5mL/A)2A iv+GI(Glucose-Insulin)療法)
  ③透析のタイミングを適切に判断する

Points
致死的不整脈を誘発するリスクが高いため、早期診断・早期治療介入することが重要である。
迅速に治療介入した後、じっくり高K血症を来した原因を検索する。

総論

K>5.5mEq/Lを高Na血症とする。
臨床的にはK>6mEq/Lが問題となることが多い。
体内のカリウムのほとんどは細胞内に存在するため、体の内外だけでなく細胞内外のバランスを考える必要がある。

また、カリウムは酸塩基平衡異常と密接な関係があることにも注意する。
 ・アシドーシス ⇔高K血症傾向
 ・アルカローシス⇔低K血症傾向

主訴

神経筋症状(筋力低下、弛緩性麻痺、痺れなど)、尿毒症を思わせる意識障害、頻呼吸、呼吸困難など
※慢性腎不全患者の不定愁訴には要注意!高K血症が潜んでいる場合あり!

General & Vital signs

全身状態は無症候性から心停止まで様々である。
不整脈出現に注意が必要!モニター波形の異常(徐脈・P波消失・wide QRSなど)に気付けるとよい。

医療面接・診察

医療面接
  既往歴(糖尿病・慢性腎不全などの腎疾患の有無が特に重要)
   ※CKD患者は高K血症を起こしやすい!
  内服薬(K保持性利尿薬、NSAIDs、ACE阻害薬、ARB、K製剤、ジキタリスなどの有無を確認)
   ※NSAIDsは腎障害の原因になり、レニン分泌を抑制する作用があるため高K血症の原因となる。
   ※ジキタリス内服患者ではカルチコール®が禁忌!

検査

心電図:テント状T波、P波消失、wide QRSなどの心電図変化の有無を確認
血液ガス:代謝性アシドーシスの有無を確認(敗血症やAKIの合併を早期に念頭に置く)
血液検査:CBC、電解質、腎機能、肝機能など
腹部エコー:腎前性(IVC経)・腎性(慢性腎不全なら腎萎縮)・腎後性(腎盂拡張・結石の有無)の鑑別

治療

①カルチコール®(8.5% 5mL/A)2Aワンショット 
 目的:迅速な心筋保護・不整脈予防目的(血清Kを下げる効果はなし) ※効果不十分なら3回まで投与
 禁忌:ジキタリス内服患者

②GI(Glucose-Insulin)療法
 目的:急速なK補正(細胞内シフト)
 組成:50%Glukose 40mL + ヒューマリンR 8単位(Glucose:Insulin=5:2)の静注
 ※病棟に上がった後は持続静注(10%Glucose 500mL + ヒューマリンR 10単位 40〜100mL/hr)を考慮

③緊急透析
 目的:緊急時の急変回避(急激なK補正が必要な状況)
 適応:A Acidosis(高度の代謝性アシドーシス)
    I Intoxication(中毒)
    U Uremia(意識障害を伴う尿毒症) ※尿毒症症状無ければBUN高値でも緊急透析適応外
    E Electrolyte(心電図変化を伴う高K血症)
    O Overload(利尿薬に反応しない溢水・肺うっ血)
 ※緊急透析の判断は難しい場合が多く、悩むなら上級医にすぐ相談する。

④根本治療(入院後)
 目的:緩徐なKの体外排泄(尿or便)
 方法:陽イオン交換樹脂(ケイキサレート®3〜12包/3x)、利尿薬(ラシックス®40〜80mg iv)

診療上のポイント・アドバイス

急性期治療後に原因を検索した上でコンサルトを行う。
まず偽性高K血症の除外(溶血、白血球増多、血小板増多)した上で、次のStepで原因を検索する。
 ①薬剤性:K保持性利尿薬、NSAIDs、ACE阻害薬、ARB、K製剤など
 ②腎機能障害:腎不全(腎前性・腎性・腎後性)
 ③細胞内からのK移動(溶血、壊死など)
 ④K摂取/排泄量の異常(摂取過剰、排泄低下(例:RTA、副腎不全))

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