インフルエンザ

要点

  ①インフルエンザは一般的な風邪同様、原則対症療法のみ
  ②高齢者や免疫不全患者は入院加療を考慮する
  ③一般的なインフルエンザの治癒までの経過を患者に説明して安心させる

Points
・流行期に熱、気道症状、全身症状のいずれかが急性発症した場合に疑う。
・飛沫感染予防策を行う。

総論

インフルエンザウイルスによる感染症である。
沖縄では1年中インフルエンザ感染が報告されており、寒気を伴う発熱をみたら鑑別に挙げる。

主訴

突然の高熱、全身症状(頭痛、筋肉痛、悪寒、倦怠感、易疲労感、発汗)、
気道症状(咳嗽、鼻水、咽頭痛)、消化器症状(悪心、嘔吐、下痢)
※インフルエンザB型では消化器症状を伴うことが多い。

鑑別疾患

その他の感染症、HIV初期症状、敗血症など

医療面接・診察

医療面接
  現病歴:発熱・全身症状を経て、気道症状が出現するのが典型的な経過。
  既往歴:気管支喘息、てんかん、川崎病などの既往の有無
  内服薬:アスピリン製剤、NSAIDs、テオフィリン、バルプロ酸、抗ヒスタミン薬の有無
      ※インフルエンザ脳症や痙攣を誘発する薬剤の有無を確認!
診察
  咽頭:イクラ状濾胞(ウイルス感染症の所見)

検査

インフルエンザ抗原迅速診断キット(感度96%、特異度95%)
※発症12時間以内は偽陰性になりやすい。
※インフルエンザ患者との接触歴があり臨床的にインフルエンザが明らかなら検査不要!

治療

①原則対症療法
 例:麻黄湯(2.5g/包) 3包/3x 5日間 ※漢方は原則食前に内服!
   アセトアミノフェン200mg 6〜9T/3x 5日間
②抗ウイルス薬
 発症48時間以内でリスク患者にのみ適応あり。
 内服:タミフル® 1回75mg 1日2回 5日間(10歳代では控える)
 点滴:ラピアクタ® 1回300mg(腎機能正常時) div(30分)
※入院症例では、ラピアクタ®が良い適応。
 ただし経口摂取可能で腸管が使用できればタミフル®でも良い。

リスク患者
①重症例:昇圧薬投与や人工呼吸管理が必要な例、肺炎、心不全、意識障害、脱水などを生じている例
②重症化の高危険群:喘息などの慢性呼吸器疾患、慢性心・腎疾患や、糖尿病、免疫不全、妊婦、乳幼児、65歳以上の高齢者
③高危険群に接する者:医療従事者、乳幼児のいる家庭など

漢方
漢方の専門家によると、麻黄湯はインフルエンザの初期(最初の2日間)に適応があり、
その後の亜急性期(3〜7日目)は柴胡桂枝湯などに切り替えることが望ましい。
また漢方は基本的に「食前」内服!

ライ症候群
インフルエンザ患者にNSAIDsを処方しない。
解熱鎮痛剤はアセトアミノフェンを処方する。

吸入薬
タミフル®の代替薬として、リレンザ®やイナビル®も適応あり。
イナビル®は1回吸入して治療終了であり、アドヒアランス不良患者に良い。
ただし喘息・肺炎・吸入不良患者では吸入薬を控える。

Discharge or Admission Criteria

高齢者や免疫不全患者、肺炎合併例は入院適応あり

肺炎
インフルエンザ後の肺炎の場合、起因菌として黄色ブドウ球菌が最も多い。
肺炎合併例では、黄色ブドウ球菌もカバーする必要あり!

診療上のポイント・アドバイス

無駄な検査や処方は控える!
基本的には4日前後で自然治癒する名前のついた風邪、という認識をもつ。
一旦解熱した後、再度発熱を認めることがよくあることを患者に説明する。
最短でも発症5日かつ解熱後2日は飛沫感染予防策を行う。免疫不全では長めにする。

インフルエンザ感染症による合併症
発熱の患者はインフルエンザの併発がないかチェックする必要がある。
逆にインフルエンザ患者はインフルエンザ以外の発熱原因がないかも必要に応じて確認。

【インフルエンザ感染症による合併症】
①呼吸器:ウイルス性肺炎、細菌性肺炎(S.pneumoniae, H.influenzae, S.aureus)、ARDS
②中枢神経:熱性痙攣、インフルエンザ脳症、無菌性髄膜炎、急性小脳失調症、
      ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎(ワクチンによる)
③その他:筋炎(下腿三頭筋に多い)、心筋炎

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