蜂窩織炎・壊死性筋膜炎

要点

  ①壊死性筋膜炎を疑ったら、抗生剤投与後直ちに形成外科or整形外科にコンサルト!
  ②蜂窩織炎の基本となる治療薬はセファゾリン!
  ③壊死性筋膜炎を疑ったら、CT/MRIでガス像・筋膜の炎症の有無を確認する。

Points
・壊死性筋膜炎は時間が勝負のlife threatening infectionの1つである。
・水疱、血疱と正常な色調の皮膚の痛みはred flagsである。
・褥瘡・DM foot・骨髄炎を見逃さない。

総論

蜂窩織炎は頻度の高い市中感染症の一つである。
しかし、蜂窩織炎のように見えて重篤な壊死性筋膜炎であったり、
実は骨髄炎や関節炎を合併していたり、滑液包炎だったりと簡単な疾患のようにみえて実は難しい。
その中でも外科的処置の適応が必要である壊死性筋膜炎や骨髄炎を見逃さないことが重要である。
フルニエ壊疽は会陰・肛門の蜂窩織炎のことである。

炎症部位と疾患の関係
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主訴

発熱、皮膚の熱感・腫脹・発赤・痛みなど

General & Vital signs

発熱以外に特に所見を認めないこともある。
感染初期は本人も気づかないような極僅かな皮膚の熱感を認めるだけの場合もある。

鑑別疾患

深部静脈血栓症、骨髄炎、関節炎、滑膜包円、褥瘡感染など

蜂窩織炎・壊死性筋膜炎の鑑別ポイント
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LRINEC score
蜂窩織炎か壊死性筋膜炎の鑑別するためのスコアリング。
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医療面接・診察

医療面接
  基礎疾患(糖尿病・腎不全・肝疾患)の有無
  淡水や海水への曝露の有無
診察
  水疱、血疱、皮下気腫の有無(壊死性筋膜炎の所見)
  Finger test(組織が指で開く)の有無(壊死性筋膜炎の所見)
  膿性滲出液の有無(化膿性蜂窩織炎の所見) ※原因菌としてMRSAが多い

検査

血液検査:CBC、生化、凝固、血液ガス
血液培養:2セット
CT/MRI:ガス像、筋膜の炎症、4mm以上の筋膜に沿った液体貯留の有無を確認

治療

①抗生剤
 蜂窩織炎(外来):CEX 250mg 6錠分3 7日分(外来フォロー必要)
 蜂窩織炎(入院):CEZ 2g×3/day ※S. aureus, Streptococcus属の二大起因菌をカバー
 壊死性筋膜炎(入院):MEPM 1g×3/day + VCM 1g×2/day + CLDM 900mg×3/day

以下の状況下では、上級医と相談し抗菌薬を慎重に選択する必要がある。
 (1)基礎疾患あり(糖尿病・腎臓病・肝障害・悪性腫瘍など)
   VCM 1g×2/day または ABPC/SBT 3g×4/day など
   ※MRSA・GNR・嫌気性菌を考慮
 (2)真水・海水への曝露あり
   CTRX 1g×1/day または CTX 2g×3/day など
   ※真水はAeromonas属、海水はVibrio vulnificusを考慮
 (3)咬傷による蜂窩織炎
   AMPC/CVA 250mg 3錠分3 + ABPC 250mg 3錠分3 7日分(外来フォロー必要)
   ※ヒトだと嫌気性菌、動物だとP. multocidaを考慮
 (4)頬部蜂窩織炎
   CTRX 1g×1/day または CTX 2g×3/day など
   ※インフルエンザ桿菌(BLNAR)を考慮

②その他
 手術:壊死性筋膜炎の場合(形成外科or整形外科に直ちにコンサルト)
 切開・排膿・洗浄:化膿性蜂窩織炎や咬傷など
 患部挙上

Discharge or Admission Criteria

軽傷で内服加療が可能であれば、抗生剤・解熱鎮痛剤を処方して帰宅可能。
ただし、後日の外来フォロー(形成外科もしくはER)予約をとること。

以下の場合は入院適応あり。
 ①高熱があり全身状態不良で、強い疼痛や痺れを伴うもの
 ②コントロール不良な基礎疾患を有する患者
 ③合併症を伴うもの

診療上のポイント・アドバイス

初期の蜂窩織炎では、主訴が発熱のみでCRPやWBC以外に診察や検査で明らかな異常所見を認めない場合がある。
全身をくまなく触診することで、軽度の熱感を探し当てることができる場合もある一方、
不明熱として入院した後から皮膚の発赤・熱感を認める場合もある。

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