STEMI

要点

  ①心電図をとりながら問診!胸痛+ST上昇→直ちに循環器コンサルトし緊急PCIの準備!
  ②大動脈解離・肺塞栓を除外した後、バイアスピリン®200mg・エフィエント®20mg・ヘパリン3000単位!
  ③右室梗塞は、硝酸薬・モルヒネ禁忌!大量輸液が重要!

Points
心電図でSTEMIを確認したら、血液検査の結果を待たずに循環器内科にコンサルト!
・食思不振や消化器症状を訴える患者の中にACSが潜んでいる場合があることを認識する。

総論

ACS(acute coronary syndrome:急性冠症候群)はSTEMI(ST上昇型心筋梗塞)とNSTE-ACS(非ST上昇型急性冠症候群)に分類される。
NSTE-ACSはさらにNSTEMI(非ST上昇型心筋梗塞)とUAP(不安定狭心症)に分類される。

急性心筋梗塞はDoor-To-Balloon time(病着してから再灌流させるまでの時間)が90分以内となるよう、素早く診断する必要がある。
典型的には全身の冷汗と胸痛が著明であり、検査を進めながら素早くPCIにつなげるようにする。
Door-To-Balloon timeを90分以内にするためには、ERでの滞在時間30分程度が目安となる。

主訴

締め付けられるような前胸部痛・心窩部痛・背部痛(肩に放散することが多い)、
冷汗、苦悶様顔貌、呼吸困難、嘔気・嘔吐など

General & Vital signs

全身冷汗著明で胸部圧迫感が明らかな場合から無症状の場合まで様々。
右室梗塞の場合は、血圧低下+心拍数低下の徐脈ショックがみられることがある。
心原性ショックに陥ると、末梢冷感や湿潤著明が著明になり、血圧低下と心拍数上昇をきたす。

MONAと右室梗塞
ACSの一般的治療としてMONAが有名だが、右室梗塞の場合は血圧低下の危険があるためモルヒネ・硝酸薬は禁忌。
右室梗塞の場合、大量補液が最も重要。

M:モルヒネ
O:酸素投与
N:硝酸薬
A:アスピリン

鑑別疾患

心血管系疾患(急性大動脈解離、肺動脈塞栓症、たこつぼ型心筋症、心筋炎、心膜炎)、
肺疾患(気胸、胸膜炎)、消化器疾患(上部消化管潰瘍・穿孔、胃食道逆流症、食道破裂)など

医療面接・診察

医療面接
  痛みのOPQRST:sudden onset / 安静時胸痛あり / 絞扼感・圧迫感 / 左肩放散痛 / 30分以上持続
  危険因子:高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙歴、家族歴、慢性腎臓病、肥満
  その他:既往歴、内服薬、健診受診歴など
診察
  心音、心雑音、血圧左右差など
  ※大動脈解離の三大合併症:AMI、AR、心タンポナーデ

検査

①心電図
 ・ST上昇・下降(下壁:Ⅱ・Ⅲ・aVF 側壁:Ⅰ・aVL・V5・V6 前壁:V1〜V4)
 ・鏡面像、新規の左脚ブロック、超急性期のT波増高
 ・時間がある程度経過している場合、異常Q波、陰性T波(時間経過で心電図が変化する)
 ※検査はすべて必ず過去のものと比較して変化を確認すること!
②血液検査
 CBC、生化、凝固、血液ガス ※CK・CK-MB・高感度トロポニンは必須!
 ※ST上昇の場合、血液検査の結果を待たずに、循環器コンサルトし緊急PCIの準備を開始!
③心エコー
 壁運動低下(asynergy)の部位、visual EF
 大動脈解離の所見の有無(例:AR、心タンポナーデ、flap)
 肺塞栓の所見の有無(例:右室負荷所見)
④胸部Xp
 上縦隔拡大・肺うっ血・胸水・気胸・左第2弓突出の有無など
⑤その他
 大動脈解離の可能性が高いと判断したら、胸腹部造影CT(ルーチンでの検査は不要)

ST上昇
STEMI以外に以下の疾患でST上昇を認める。

・早期再分極
・肥大型心筋症
・たこつぼ型心筋症
・異型狭心症
・心外膜炎
・急性大動脈解離
・心室瘤
・Brugada症候群
・くも膜下出血
・高K血症
・肺塞栓など

治療

①酸素投与
②PCI前準備
 内服薬:バイアスピリン®200mg(100mg 2錠)、エフィエント®20mg(20mg 1錠)
 注射薬:ヘパリン3000単位/3mL iv
③疼痛管理
 例:ソセゴン®15〜30mg(15mg/1mL/A または 30mg/1mL/A) iv
   モルヒネ(10mg/1mL/A)+ 生食9mL 2mL iv
④その他(基本的にカテ室に移動してからでOK)
 ニコランジル(シグマート® 12mg/1mL/V)2V + 生食48mL 2mL/hr div
 ヘパリン(10,000U/10mL)10,000U + 生食40mL 2mL/hr(10,000U/day)

抗血小板薬
内服薬を確認し、すでに内服している場合はskipする。
バイアスピリン®を内服していれば、エフエント®20mgのみ内服。
チエノピリジン系を内服していれば、バイアスピリン®200mgのみ内服。
内服薬が不明な場合は2剤内服させて良い。

【チエノピリジン系】
クオピドグレル(プラビックス®)、チクロピジン(パナルジン®)、プラスグレル(エフィエント®)

Discharge or Admission Criteria

絶対入院適応。
ER初期治療中でも急死の可能性があるため、予断を許さないことを家族へ説明することが大切。

診療上のポイント・アドバイス

心電図をとりながら病歴を聞き、ST上昇を認めた時点で直ちに循環器内科にコンサルト。
血液検査の結果を待たない!コンサルトは簡潔に、緊急PCIを依頼する旨を伝える。

ページ上部へ戻る