くも膜下出血

要点

  ①頭痛の鑑別にくも膜下出血を必ず挙げる!
  ②診断後、直ちに降圧(ペルジピン®など)・鎮痛(ソセゴン®など)などの治療を開始し脳外科コンサルト!
  ③再破裂(痙攣、呼吸停止、Cushing現象など)に備える!

総論

くも膜下出血(SAH)とは、くも膜下腔内に起こった出血の総称。
原因としては、脳動脈瘤の破裂が最も多く(70-80%)、その他には脳動脈奇形(5−10%)、
脳腫瘍や外傷、原因不明(約10%)と続く。
walk-inで受診する症例もあるため注意が必要。
痛みの強さに関係なく、頭痛(特にsudden onset)を訴えたら必ず本疾患を鑑別に挙げること。

主訴

頭痛(突然発症の頭痛、人生最悪の頭痛)、嘔気嘔吐、意識障害、髄膜刺激症状など

General & Vital signs

Generalは様々で、walk-in症例もあるため注意が必要。
Vital signsも多様だが、くも膜下出血の約半数でSBP≧180mmHgと言われている。
またCushing現象(高血圧+徐脈)は頭蓋内圧亢進を示唆する。

鑑別疾患

一次性頭痛(片頭痛、筋緊張性頭痛、群発頭痛)、
二次性頭痛(外傷、脳血管障害、脳腫瘍、髄膜炎、緑内障、側頭動脈炎、副鼻腔炎、椎骨・内頚動脈解離、顔面帯状疱疹など)

くも膜下出血の合併症
・再破裂(痙攣、呼吸停止、Cushing現象など)
・神経原性肺水腫(ARDS)
・たこつぼ型心筋症(心尖部のみ壁運動低下、巨大陰性T波)

医療面接・診察

医療面接および診察に関しての基本は、「一次性頭痛」を参照。
SAHと診断する上で必要な医療面接
  ・頭痛の性質を「痛みのOPQRST」に従って詳しく聞く。
  ・脳血管障害のリスク因子(高血圧、脂質異常症、糖尿病、飲酒、喫煙、家族歴)の確認
  ・未破裂脳動脈瘤の有無の確認
  ・抗凝固薬、抗血小板薬などの内服の有無の確認
  ・外傷の既往の有無の確認

検査

頭部CT:SAHの確定診断で最も有用な検査
    ※診断後、腎機能に問題なければそのまま3D-CTA撮影へ!腎機能障害がある場合はMRAへ!
    (脳動脈瘤やAVMなどのSAHの原因検索を迅速に行う)
血液検査:CBC、生化、凝固、血液型、感染症
心電図:巨大陰性T波など
その他:頭部MRI、腰椎穿刺 ※頭部CTで診断がつかない場合でも、SAHを強く疑う場合に考慮する!
 ・頭部MRI:FLAIRにて、くも膜下腔の出血は発症直後から亜急性期まで高信号を呈する
 ・髄液所見:血性またはキサントクロミーの外見を呈する

治療

①降圧(目標:100≦SBP≦120mmHg)
 ・静注:ペルジピン®(2mg/2mL/A) 0.5〜1.0A iv
 ・持注:ニスタジール®(10mg/10mL/A)5A + 生食50mL 2mL/hrから開始(最大30mL/hr)
②鎮痛
 ソセゴン®(15mg/1mL/A) 1A iv
③制吐
 メトクロプラミド(10mg/2mL/A) 1A iv
④止血・抗潰瘍治療
 アドナ®(50mg/10mL/A)1A + ファモチジン(20mg/A) + 生食100mL div
 ※トラネキサム酸は内因性くも膜下出血の場合、血管攣縮を誘発し得るため投与しない!
 (外傷性くも膜下出血の場合はトラネキサム酸も1A混注して投与する!)
⑤鎮静・脳圧降下
 暗く静かな部屋(原則第一初寮室)に収容し、頭部挙上(30度)で安静を保つ
 ※マンニトール・グリセールは再出血を誘発するリスクがあるため原則使用しない!

Discharge or Admission Criteria

入院。手術orカテーテル治療or保存加療のいずれかの方針となる。
コンサルト時に脳外科医に以下の情報を伝える。
年齢・性別・発症時刻・意識レベル(JCS)・血圧・麻痺の有無・Midline shiftの有無

診療上のポイント・アドバイス

・SHAは再破裂(痙攣、呼吸停止、Cushing減少など)・脳血管攣縮を予防することが重要である。
・期間挿管やNG挿入、Aライン確保などを行う必要がある場合、しっかりと降圧、鎮静、鎮痛下で行う。
・再破裂は発症24時間以内、特に6時間以内に起こりやすく、脳血管攣縮は発症4〜14日に起こりやすい。

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