めまい

要点

  ①医療面接で、『めまい歴・持続時間・増悪因子』の3つを必ず確認!
  ②めまいの性状は必ずしも末梢性と中枢性を鑑別する因子になり得ない!
  ③中枢性と心原性を除外することが重要!

総論

めまいはERで遭遇する頻度が高い疾患であり、その原因には緊急性の高い疾患が隠れていることもある。
そのため、めまい診療では中枢性、末梢性、心原性、その他に区別した上で鑑別を行っていく。

主訴

めまい、ふらつき、耳鳴りなど

患者さんの言う「めまい」をしっかり把握することが重要!
回転性、浮動性、前失神の3つ以外にも、下肢脱力等をめまいと表現することがあり注意が必要!
「めまい」という曖昧な言葉を具体的な「天井が回る」「意識が遠のく感じがする」などの言葉に置き換えることが重要。

General & Vital signs

Generalはsickの場合が多い。開眼や体位変換困難なことも。
血圧上昇があれば中枢性疾患(特に出血性疾患)の可能性を疑う。
血圧左右差があれば大動脈解離を必ず除外する。

鑑別疾患

中枢性
  脳血管障害(小脳または脳幹の梗塞、出血が多い)、脳腫瘍など
心原性
  血圧上昇、低血圧、不整脈(例:完全房室ブロック)、急性大動脈解離など
耳疾患
  BPPV、Meniere病、突発性難聴、前庭神経炎など
その他
  薬剤性(例:アミノグリコシド系)、外傷(頭部外傷、むちうち)、ストレスなど

めまいの新分類
以前はめまいの性状に注目した分類(回転性、浮動性)がなされていたが、
めまいの性状は必ずしも末梢性と中枢性を鑑別する因子になり得ないことが分かってきたため、
以下のような新しい分類が提唱されている。

①急性重症めまい(突発性、嘔気嘔吐、持続性):脳梗塞、前庭神経炎など
 →HINTS(HIT+方向交代性眼振+Skew deviation)で中枢性と末梢性を分類する。
②再発性頭位変換めまい(頭位変換によるめまいの増悪):BPPV、小脳腫瘍、小脳変性疾患、キアリ奇形
 →BPPVが最多であり、Dix-Hallpkeテストで診断し、Epley法で治療可能。
③反復性めまい(頭位変換により惹起されず、めまい歴あり):Meniere病、TIA
 →Meniere病が最多だが、非典型ではTIAを疑う。

医療面接・診察

医療面接
  ・めまい歴、持続時間、増悪因子
   めまい歴:めまい歴が複数回以上あればMeniere病疑い
   持続時間:1分以内ならBPPV、数時間ならMeniere病や中枢性めまい疑い
   増悪因子:頭位変換による増悪ならBPPV、光や音刺激による増悪ならMeniere病疑い
  ・めまいのOPQRST
   突然発症、複視、視野欠損、麻痺、失調など:脳血管障害
   激しい頭痛:くも膜下出血
   耳鳴り・難聴:Meniere病、突発性難聴
   動悸・失神:不整脈
   起立時の血の気が引くような感じ:起立性低血圧、血管迷走神経反射(→Pre-syncope)
診察
  ・一般身体所見⇒貧血、脈不整、頸動脈のbruit、簡易Tilt試験、眼振の有無など
  ・神経学的所見(特に脳幹症状をしっかり診察して確認)
   例:Barre徴候、眼振の有無および性状、構音障害、四肢・顔面の感覚障害、指鼻試験、反復拮抗運動
  ・頭位や体位変換でのめまいの誘発(Dix-Hallpkeテスト・Epley法

Epley法
BPPVの診断的治療
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検査

※明らかなBPPVやMeniere病の場合、検査は不要!状況によって以下の検査を考慮する。
頭部CT/MRI:初回のめまい発作の場合
       頭蓋内圧亢進を疑う症状・所見(例:頭痛、嘔気・嘔吐、瞳孔不同)や神経学的所見を認める場合
血液検査:CBC、生化、血液ガス(CKやLacを評価し、痙攣の有無を確認)
心電図:不整脈(例:δ波、QT延長症候群、ST変化、房室ブロック)の有無

治療

ER治療
中枢性めまい(例:脳梗塞、脳出血)や心原性が否定できれば、以下の対処療法を行う。
 ①補液(例:生理食塩水、ハルトマン)
 ②制吐薬(メトクロプラミド1A iv)
 ③抗めまい薬(メイロン®(20ml/A) 2A iv、アタラックスP®1A+生食 div、セルシン®(5mg/A)0.5〜1A iv)
処方薬
症状が改善し、歩行可能になれば以下の内服薬を処方し、耳鼻科外来を予約して帰宅。
 ①抗めまい薬:ベタヒスチンメシル®(6mg)またはトラベルミン® 3T/3x
 ②制吐薬:ドンペリドン®(10mg) 嘔気時頓用 or 3T/3x ※制吐薬は基本的に食前!

Discharge or Admission Criteria

末梢性めまいであれば、症状が改善すれば帰宅可能(後日耳鼻科外来に紹介)。
中枢性疾患、外科的・内科的疾患が原因ならば入院を考慮。

末梢性に典型的なエピソードであっても、投薬にも関わらず立位が保持出来ない、歩行出来ない場合、
中枢性めまいを否定するために頭部画像検査を行なう。
頭部画像精査にて中枢性否定的とされる場合も、歩行出来なければ入院の適応となる。

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