消化管出血(下血・血便)

要点

  ①バイタルが不安定な場合、すぐに急速輸液を開始!
  ②Hbや出血量などから輸血の必要性を判断!
  ③ワーファリン内服患者の場合、ケイツーの必要性も検討!

Points
ERを受診する下血・血便の原因として、憩室出血と虚血性腸炎が二大疾患である。
初期治療の第一歩は細胞外液の急速輸液。
輸血の必要性を判断し、迅速に消化器内科にコンサルトする。

総論

「下血」は上部消化管からの出血により起こり、黒色便(タール便)を呈する。
「血便」は下部消化管からの出血により起こり、真っ赤な鮮血便を呈する。

憩室出血・虚血性腸炎の鑑別
ERに受診する『血便』の原因の二大疾患。
①憩室出血
 腹痛なし、反復性あり(※憩室出血は動脈性の出血)
②虚血性腸炎
 腹痛あり、下痢が先行し血便を認めた後に症状軽快

主訴

下血、血便、腹痛
ふらつき、失神のみで受診することもあり注意が必要!

General & Vital signs

心拍数が循環血液量の減少を表す最も鋭敏な指標となる。
頻脈を認める場合、出血性ショックに陥る可能性があり注意が必要。

鑑別疾患

下血:胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃癌、鼻出血など
血便:憩室出血、虚血性腸炎、直腸潰瘍、大腸癌(40歳以上)、炎症性腸疾患(若者)、感染性腸炎など

医療面接・診察

医療面接
  便の色調・回数 ※量より回数が客観的な指標になる!
  随伴症状(腹痛、下痢、悪心嘔吐)の有無
  内服薬(NSAIDs・抗血栓薬・PPI・胃薬・鉄剤・ステロイドなど)
  上部/下部内視鏡の検査歴
診察
  基本的な腹部診察(左下腹部痛は虚血性腸炎の典型)
  直腸診(便の性状・色調、潰瘍や腫瘤の確認)

検査

血液検査:CBC、生化、凝固、血液型、感染症
     ※出血の急性期はHb低下を認めない!
     ※BUN/Cre≧20は上部消化管出血の可能性を示唆する!
腹部単純・造影CT:動脈相・門脈相の2相でオーダー。extravasationや腫瘍性病変の検索。

extravasation
憩室出血の造影CTでextravasationを認める場合、緊急CFとなる可能性大。
extravasationがない場合、待機的CFとなることが多い。

治療

①輸液・輸血
 バイタルが不安定な場合は急速輸液を行い、輸血の必要性を判断し必要なら準備を開始。
 1〜2本急速輸液を行った後、状態が落ち着けば輸液速度は60〜80mL/hrで可
②消化器内科コンサルト
 緊急内視鏡止血術の必要性を判断していただく。
③拮抗薬
 ワーファリン内服患者の場合、ビタミンK(ケイツー®(10mg/A) 1〜2A+生食50mL)投与も検討

Discharge or Admission Criteria

原則入院。入院後、絶食+補液±PPIで治療開始。

診療上のポイント・アドバイス

緊急性の高さを示す情報を的確に消化器内科にコンサルトする。
また出血の部位や疑っている疾患を明確に伝える(特に上部消化管出血は緊急性を要する場合あり)。
輸血準備ができていないと緊急内視鏡が行えない場合があるため、輸血準備の必要性も確認すること。

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