DKA/HHS

要点

  ①DKA/HHSのもっとも重要な初期治療は大量補液!
  ②DKA/HHSの誘発原因として、感染症、敗血症、心筋梗塞などが潜んでないか要確認!
  ③HHSでは、循環動態が安定してからインスリンを投与する。

Points
DKA(糖尿病性ケトアシドーシス)は先行感染を引き金に起こることが多い。
DKAの治療と同時に、その原因検索を行うことが重要である。
腹痛、嘔気・嘔吐を主訴にERを受診することもあり、DM患者の腹痛を安易に「急性胃腸炎」と診断しない。
HHS(高浸透圧高血糖症候群)も心不全や腎不全、敗血症などの合併症がある場合が多い。

総論

耐糖能異常の患者で、インスリン欠乏により脂肪分解が亢進し遊離脂肪酸が増加し、
肝でのケトン体合成が高まりケトアシドーシスとなり、血中pHは通常7.3以下となった病態がDKAである。
また高血糖が進行し浸透圧利尿が促進される結果、脱水や電解質異常を来たす。
Ⅰ型DM患者に多いが、Ⅱ型DM患者でもしばしば起こる。
境界型耐糖能障害でもソフトドリンクケトアシドーシスなどがある。

似た病態を示すものに非ケトン性高浸透圧性昏睡(HHS、NHKC、HONK)があるが、
こちらは脂肪分解を抑制する程度のインスリンは残存するためケトン体の生成は抑制される。
HHSは通常2型DMで起こる。

主訴

DKA:腹痛、悪心、嘔吐、倦怠感、口渇、多尿、意識障害、昏睡、アセトン臭など
HHS:口渇、多尿、脱水症状、昏睡など

General & Vital signs

頻呼吸(Kussmaul呼吸)が見られ、脱水が進むと血圧の低下や意識レベル低下を起こす。
感染を伴っていれば発熱も見られる。

DKAの合併症
DKA症例では高頻度で敗血症を来たしており、敗血症ショックの症例も少なくない。
DKAを見たら必ずその原因を検索し、すぐに原疾患の治療を開始する必要がある。
DICやARDSなどの予防、管理も重要。

また高度脱水により急性心筋梗塞に陥る場合がある。
逆に急性心筋梗塞によるカテコラミンリリースでDKAに陥る場合もある。
来院時の心電図チェックも必ず行うこと。

鑑別疾患

低血糖、非ケトン性高浸透圧性昏睡、アルコール性ケトアシドーシス(AKA)、乳酸アシドーシス、
肝性脳症、脳血管障害、感染症、その他の意識障害を来たす疾患(AIUEOTIPS)、消化器系疾患など

医療面接・診察

医療面接
  現病歴:誘引(感染、飲酒、嘔吐、下痢、心身ストレス、清涼飲料水の多飲など)を意識した医療面接
      ※感染症や心筋梗塞などを合併する場合もあるため、詳しい病歴聴取、ROSの問診は欠かせない!
  既往歴:糖尿病の既往、使用している薬剤、コントロール状況、内服アドヒアランスなど
診察
  アセトン臭・Kussmaul呼吸の有無、脱水の評価

検査

簡易血糖:DM患者の腹痛や意識障害では必ず確認!
血液検査:CBC、生化、凝固、血液ガス、血糖、HbA1c、アミラーゼなど(入院後、抗GAD抗体なども確認)
尿検査:pH、尿蛋白、尿糖、尿中ケトン体など
心電図:急性心筋梗塞合併の有無を確認
その他:胸部Xp、意識障害があれば頭部CTなども考慮

DKAとHHSの鑑別
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治療

20G以上のラインを2〜3本確保し、A-line・尿道カテーテル挿入する。K補正が必要な場合はCV挿入も考慮。

①大量補液
 ※DKAでは5〜6L、HHSでは10L以上の脱水状態であり、ERにいる間は生食全開投与になることが多い!
 ・最初の2-3時間は500〜1000ml/hrで生食負荷
 ・次の3〜8時間は250ml/hr程度、その後は尿量をみながら100〜250ml/hrで調整
 ・血糖値≦200mg/dLとなったら、ソルデム3Aへ変更
 ・高齢者、心不全患者の場合は約30〜50%減で補液開始を考慮
 ・原則は生食だが、Na>155ならHalf Saline(例:ソルデム1A)を考慮
②血糖管理
 ※HHSの場合、循環動態が安定(例:血圧、尿量)するまではインスリン投与しない!
 (血清浸透圧が低下することで、ショックが増悪する可能性があるため)
 組成:生食49.5ml+ヒューマリンR50単位(0.5ml) 1単位/mL
 速度:0.1単位/kg/hr div (体重50kgの場合、5単位/hr)
 評価:最初の2時間は1時間毎に血糖測定、以後2時間毎に血糖測定しインスリン投与量を調節
 補足:インスリン投与の目的はHCO3の正常化!HCO3が改善するまで継続必要!
    血糖が下がる場合は補液ラインとは別にブドウ糖を補充しながらインスリン投与継続!
③カリウム補正
 ※インスリン作用によりKが細胞内に移動するため、排尿があれば高KでもK補正が必要!
 ・CVからKCL 1A(20mEq/20ml/A)+生食20ml div(1hr)投与
 ・2時間毎にK値をフォロー
④原因の治療
 例:細菌感染→抗菌薬投与、急性心筋梗塞→緊急PCI

Discharge or Admission Criteria

原則入院

診療上のポイント・アドバイス

血中Na濃度は重症度の判断に重要。
軽症DKAでは血清浸透圧が上がるため希釈性利尿で多尿・低Naとなる。
重症DKAやHHSでは細胞内脱水・高血糖の影響で自由水が大幅を大幅に喪失し高Naとなる。

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