COPD急性増悪

要点

  ①診断後速やかに治療を開始する(SABAの吸入、PSL内服 or mPSL静注)
  ②酸素投与はSpO2 88〜92%をち、CO2ナルコーシスに注意する
  ③努力呼吸を認める場合、動脈血液ガスを評価しNIV(または気管挿管)の適応を考慮する

総論

COPD急性増悪とは、呼吸器症状(例:安静時の呼吸困難の増強、咳嗽の悪化、喘鳴、痰の増加・膿性化)が急な経過で悪化し、普段の治療(吸入薬など)に追加治療を要する状態。

主訴

喘鳴、呼吸困難、喀痰、咳嗽、発熱、意識障害(CO2ナルコーシス)

General & Vital signs

重症例では、努力呼吸(呼吸補助筋の使用など)が著明に見られる。
またバイタルサインでは、頻呼吸やSpO2の低下などの異常がみられる。
低酸素血症が重度(マスク5L/分以上 or FiO2 40%以上を要する状態)である時は、合併症(肺炎、肺血栓塞栓症、心不全、気胸、胸水や無気肺、肺高血圧症や間質性肺炎の合併)を考慮する。

鑑別疾患

肺炎、肺塞栓症、うっ血性心不全、不整脈、気胸、胸水、鎮痛薬・睡眠薬の不適切な使用によるCO2ナルコーシス

医療面接・診察

医療面接
  普段の症状(湿性咳嗽の有無、呼吸困難はmMRCで評価)
  普段の治療内容(吸入薬、酸素の使用、急性増悪の治療歴)
  症状の出現時期、その後の増悪経過、随伴症状(例:発熱、共通、動悸)の有無
診察
  肺の過膨張を示唆する所見(ビア樽状胸郭、気管短縮、Hoover徴候、鼓音、呼吸音減弱)
  気道狭窄の所見(喘鳴、口すぼめ呼吸)
  呼吸補助筋の所見(胸鎖乳突筋・斜角筋の発達・使用の有無、吸気時の鎖骨上窩、肋間の陥凹)
  肺高血圧/肺性心の合併所見(ⅡPの亢進、心基部の吸気時に増強する全収縮期雑音、頸静脈怒張、下腿浮腫)
  CO2ナルコーシスの所見(意識障害、Hot hands、Asterixis(羽ばたき振戦)、ミオクローヌス)
  ばち指の有無(ばち指があれば肺癌、間質性肺炎、シャント疾患を考慮)

mMRC(modified MRC)
呼吸困難を評価する質問票。
  Grade0:激しい運動をしたときだけ息切れがある。
  Grade1:平坦な道を早足で歩く、あるいは緩やかな上り坂を歩くときに息切れがある。
  Grade2:息切れがあるので、同年代の人より平坦な道を歩くのが遅い、あるいは平坦な道を自分のペースで歩いているとき、息切れのために立ち止まることがある。
  Grade3:平坦な道を約100m、あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる。
  Grade4:息切れがひどく家から出られない、あるいは衣服の着替えをするときにも息切れがある。

検査

血液検査:CBC、電解質、肝機能、腎機能、CRP、NT-proBNPなど
動脈血液ガス:努力呼吸がみられる場合や、普段よりSpO2が低下している場合に施行
胸部Xp:COPDの特徴(過膨張、透過性亢進、滴状心)や肺炎、無気肺、気胸、肺うっ血の有無
胸部CT:胸部Xpで評価困難な場合(肺塞栓を疑う時は造影まで必要)
各種培養:痰培養は必須 ※必要に応じて喀痰抗酸菌培養や血液培養
※その他の疾患との鑑別のために、心電図や心エコーも考慮する

治療

①酸素投与(低酸素血症があった場合)
  SpO2 88~92%を目標に投与量を調整。CO2ナルコーシスに注意する。
  酸素投与開始後は血液ガス(二酸化炭素分圧の確認は静脈ガスでも可)を適宜フォローする。
②気管支拡張薬の吸入(問診、診察後に速やかに開始する!)
  ベネトリン® 0.5ml+生食2.0ml 20分毎に1~3回 症状に応じて適宜追加可
③ステロイド投与
  内服可能:プレドニン® 40mg/day 5日間
  内服困難:ソル・メルコート® 40mg + 生食or5%ブドウ糖液 50mL div
④抗菌薬(痰量増加・膿性痰のあるCOPD急性増悪で考慮)
  肺炎治療に準じて抗菌薬を選択する(肺炎のページ参照)。
⑤人工呼吸管理
  以下の状況の場合はNIV装着を考慮する。
      ①PaCO2 45 mmHg以上
      ②pH 7.35以下
      ③呼吸努力が強いとき(呼吸補助筋の使用)
※NIVでの管理が困難(アシドーシスが改善しない、喀痰が多い)場合は気管挿管を考慮する。

Discharge or Admission Criteria

酸素療法、薬物療法で自覚症状の改善、酸素化の改善があれば帰宅可能。
帰宅する際はプレドニン® (40mg 4日間)、サルタノール®(発作時1回2吸入)、必要に応じて抗菌薬を処方する。
未診断例、かかりつけ医がない場合は呼吸器内科へ紹介(3~7日後、肺機能の評価や吸入薬の選択を行う)。
呼吸困難の持続、酸素投与を要する状態(HOTの患者では酸素必要量が普段より多い時)は入院。

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