気管支喘息発作

要点

  ①診断後速やかに治療を開始する(SABAの吸入、PSL内服 or mPSL静注)
  ②喘息関連死のリスクを把握しておく
  ③呼吸不全の際はNIVを行うが、改善が乏しい時は速やかに挿管・人工呼吸管理を行う

Points
・喘鳴のグレードのみが重症度を規定するわけではなく、意識、会話が困難、頻呼吸、副呼吸筋の使用の有無が重要である(例:wheeze2度が3度より軽症ではない)。
・来院時軽症でも急に重症化することがあり、診断後すぐに治療を行う(検査結果を待たない)。

総論

様々な誘因から気道の炎症が起こり、気流が制限される疾患。
時に生命に関わるような重症化する恐れもあることに注意する必要がある。
気道感染、ストレス、過労、何かしらの抗原の吸入などが誘引となりうる。

主訴

呼吸困難、喘鳴、咳嗽、意識障害など

General & Vital signs

頻呼吸、努力呼吸(例:呼吸補助筋の使用)、頻脈(110回/分以上)
※呼吸補助筋:胸鎖乳突筋、斜角筋、僧帽筋、腹直筋など

鑑別疾患

心不全、COPD急性増悪(高齢者、長期喫煙者はERでの正確な鑑別は困難)、気道異物や気道内の腫瘤性病変など
※他疾患(DPB、ABPA、EGPAなど)はERでの確定は困難

医療面接・診察

医療面接
  普段のコントロール状況(定期吸入)
  最近の発作頻度(SABAをどれくらい使用したか)
  気管支喘息発作での入院歴・挿管歴の有無
  発作のトリガー(感冒、悪天候、わかる場合は何かしらの吸入抗原)
  いつから発作の症状が出現したか、随伴症状の有無(発熱、痰など)
診察
  wheezeの有無、呼吸音左右差(気胸合併の検索)、crackleの有無(肺炎合併の検索)
  ※心不全やCOPDに特徴的な所見がないかも確認すること

Johnson分類
wheezeの程度は以下の4つに分類される。
 ・GradeⅠ:強制呼気のみで聴取
 ・GradeⅡ:通常呼気で聴取
 ・GradeⅢ:呼気・吸気ともに聴取
 ・GradeⅣ:呼吸音減弱(Silent Chest)

気管支喘息は通常polyphonicなwheezeであり、気道異物・腫瘤などは限局したmonophonic なwheezeを呈する。
また、1度のwheezeは強制呼気を促さないと聴取できない。
慢性咳嗽の原因として喘息によるものがあり、強制呼気でのwheezeの有無を評価することは重要である。

検査

※軽症例(若い人で酸素飽和度の低下がなく、呼吸努力がない場合)では検査の必要なし!
胸部Xp:肺炎、気胸、心不全を疑う場合(ルーチンでの撮影は推奨なし)
動脈血液ガス:呼吸不全を疑う場合
血液検査:肺炎、心不全を疑う場合(好酸球数、血清IgE値は気管支喘息において参考になるが、ERでの検索は必須ではない)
痰培養:肺炎を疑う場合

治療

①酸素投与(低酸素血症があった場合)
  SpO2 93~95%を目標に行う。
②気管支拡張薬の吸入(問診、診察後に速やかに開始する!)
  ベネトリン® 0.5ml+生食2.0ml 20分毎に1~3回
  症状に応じて適宜追加可
③ステロイド投与
  内服可能:プレドニン® 0.5〜1.0mg/kg(最大50mg) 5〜7日間
  内服困難:ソル・メルコート® 40mg + 生食or5%ブドウ糖液 50mL div
※アスピリン喘息(NSAIDs誘発性喘息)の際もPSLは内服可能だが、点滴はデカドロン(デキサート® 6.6 mg +生食or5%ブドウ糖液 50mL)を投与する。(コハク酸はアスピリン喘息を増悪させる可能性あり)

呼吸不全(PaCO2≧45 torr、もしくは呼吸努力が強い時)は上級医に相談し下記の治療の追加を検討する。
④硫酸マグネシウム 2g + 生食or5%ブドウ糖液 50mL div
⑤アドレナリン 0.3 mg 筋注
⑥NIVの装着

※抗菌薬のルーチン投与は推奨されていないが、気管支炎・肺炎の合併があれば積極的に使用する。
※心不全との正確な鑑別が困難であるときは、上級医と相談の上、喘息発作としての治療をトライしてもいい。

NIVの適応
・気管支拡張薬の吸入で改善が乏しい呼吸困難
・著名な努力呼吸、明らかな呼吸筋疲労
・pH 7.35以下
・PaCO2≧45 torr
NIV導入時は、常に気管挿管の適応を念頭においておく。

Discharge or Admission Criteria

SABAの3回吸入、PSLの内服後に呼吸困難が改善し、酸素飽和度の低下や呼吸努力がなければ帰宅可能。
帰宅時はPSL 0.5〜1.0mg/kg(最大50 mg) の5〜7日分を処方する。
新規に吸入薬を処方する場合は、SABA(例:サルタノール® 発作時1回2吸入)とICS/LABA(例:レルベア® 1日1回 1回1吸入)を処方する。
主治医がいない場合は呼吸器内科を予約する(重症でなければ5-10日後で可)。
喫煙者では吸入ステロイドの効果が落ちるため、禁煙を指導する。
酸素投与が必要な状態や努力呼吸が持続する場合は入院適応となる。

喘息関連死のリスクファクター
・致死的な気管支喘息発作(挿管、人工呼吸管理)の病歴
・1年前までにおける気管支喘息発作でのER受診歴もしくは入院歴
・経口ステロイドを最近の使用、もしくは最近の使用終了
・吸入ステロイドを最近使用していない
・SABAの使用が多い(サルタノールを1か月に1本以上使用)
・精神疾患もしくは心理社会的な問題を有する
・気管支喘息の治療薬に対するアドヒアランスが不良
・食物アレルギーを有する
(GINA 2016より抜粋)

 

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